LOGIN亜蘭レイ、二十八歳。彼女には五人の恋人がいる。 会社員の隼人、美容師の蒼太、教師の理央、音楽プロデューサーの奏多、大学生の悠馬。それぞれが異なる魅力を持ち、それぞれがレイを愛している。 レイは誰にも嘘をつかない。五人全員に、同じように愛していると伝える。なぜなら、それが真実だから。 しかし、偶然の誕生日パーティーで五人は鉢合わせする。真実を知った彼らは動揺し、三人は去っていく。残ったのは、隼人と悠馬だけ。 さらに、レイの生き方がマスコミに取り上げられ、炎上する。「節操がない」「社会の害悪」――世間の批判が殺到する中、レイは記者会見で堂々と語る。 「私は、謝りません。だって愛に謝る必要はないから」
View More三年が経った。 レイは、三十二歳になっていた。 東京の夏は、相変わらず暑い。 でも、レイはこの暑さが嫌いではなかった。 生命力を感じさせる暑さだ。 レイは、今も同じデザイン事務所で働いていた。 仕事は充実していて、いくつかの大きなプロジェクトも任されるようになった。 隼人は、転職していた。 あの広告代理店を辞め、小さなコンサルティング会社に移っていた。「もう、終電まで働く生活は嫌だ」 隼人は、そう言って決断した。 給料は下がったが、隼人は満足していた。「人生は、金だけじゃないって、やっとわかったよ」 悠馬は、大学を卒業し、NPOで働いていた。 親が望んだ大手企業ではなく、自分が本当にやりたいことを選んだ。「レイさんが教えてくれたんです。自分の人生は、自分で決めるって」 三人の関係は、続いていた。 週に一度ずつ会う。 時には三人で会うこともある。 それが、三人のリズムだった。 ある日、レイはいつものカフェにいた。 千鶴のカフェ。 千鶴は、少し歳を取ったが、相変わらず元気だった。「レイちゃん、最近どう?」「相変わらずよ」「それは何よりだわ」 カフェのドアが開いた。 入ってきたのは、若い女性だった。「あの、亜蘭レイさんですか?」「はい」「私、あなたの記事を読んで、勇気をもらった者です」 レイは、微笑んだ。「そうなの? 嬉しいわ」「私も、同じような生き方をしています。でも、誰にも言えなくて」「言わなくてもいいのよ。大切なのは、自分が納得していることだから」「でも、あなたは公にしましたよね」「それは、状況がそうさせただけ。必ずしも、みんなが公にする必要はないわ」 女性は、安心したような表
記者会見から三ヶ月が経った。 秋が深まり、東京の街路樹が色づき始めていた。 レイの生活は、徐々に落ち着きを取り戻していた。 デザイン事務所での仕事は順調で、新しいプロジェクトにも参加していた。 隼人と悠馬との関係も、安定していた。 週に一度ずつ会い、一緒に時間を過ごす。 それが、三人のリズムになっていた。 ある日、レイは千鶴のカフェで仕事をしていた。 ノートパソコンの画面に向かい、新しいロゴデザインを作っている。 その時、カフェのドアが開いた。 入ってきたのは、見覚えのある顔だった。 蒼太だった。「レイさん」 レイは、驚いて顔を上げた。「蒼太......」「久しぶりです」 蒼太は、少し緊張した様子でレイの前に立っていた。「座らない?」「いいんですか?」「もちろん」 蒼太は、レイの向かいに座った。 しばらく沈黙が続いた。「元気でしたか?」 蒼太が尋ねた。「まあまあね。あなたは?」「俺も、まあまあです」 また沈黙。「あの、レイさん」「うん」「記者会見、見ました」「そう」「すごいと思いました。あんなに堂々と、自分の生き方を語るなんて」 レイは、小さく微笑んだ。「堂々となんてしてなかったわ。内心は震えてた」「でも、逃げなかった」「逃げても仕方なかったから」 蒼太は、コーヒーを一口飲んだ。「レイさん、俺、謝りたくて来ました」「謝る?」「はい。あの時、俺、レイさんのことを理解しようとしなかった」「いいのよ。あなたは、あなたの選択をしただけ」「でも、今なら少しわかる気がするんです」「何が?」「レイ
記者会見から三日後、レイの生活は劇的に変わった。 いや、変わったというより、むしろ元に戻ったと言うべきか。 マスコミの取材は続いていたが、レイはもう対応しなかった。言うべきことは、全て記者会見で言った。 SNSの炎上も、徐々に収まっていった。次の話題が出てきて、人々の関心は移っていった。 レイは、新しい仕事を見つけた。 小さなデザイン事務所が、レイを雇ってくれた。 社長は、五十代の女性だった。「私は、あなたの生き方を応援するわ」「ありがとうございます」「人は、それぞれ違う。それを認め合うことが、大切だと思うの」 レイは、その言葉に救われた。 ある日、隼人から提案があった。「三人で、焼肉でも食べに行かないか?」「焼肉?」「ああ。俺、最近肉が食べたくて」 悠馬も賛成した。「いいですね。俺も行きます」 その夜、三人は焼肉店に行った。 小さな店だが、評判の良い店だ。 三人は、テーブルを囲んだ。 七輪に炭が入れられ、火がつけられる。 オレンジ色の炎が、三人の顔を照らす。「じゃあ、乾杯」 隼人が、ビールのジョッキを持ち上げた。「何に乾杯する?」「俺たちに」 三人は、ジョッキを合わせた。「乾杯」 ビールの冷たさと苦味が、口の中に広がる。「うまい」 隼人が、満足そうに言った。 肉が運ばれてきた。 カルビ、ロース、ハラミ。 レイが、肉を焼き始める。 肉が焼ける音。ジュウジュウという、心地よい音。 煙が立ち昇り、タレの甘辛い香りが漂う。「はい、どうぞ」 レイが、焼けた肉を隼人と悠馬の皿に載せる。「ありがとう」 二人は、肉を口に入れた。「うまい!」
炎上は、収まらなかった。 毎日、新しい記事が出る。テレビのワイドショーでも、レイの話題が取り上げられた。 コメンテーターたちは、好き勝手に意見を述べた。「こういう生き方は、社会の秩序を乱す」「でも、彼女は誰も傷つけていないのでは?」「いや、関わった男性たちは傷ついているはずだ」「本人たちが納得していれば、問題ないのでは?」 議論は、延々と続いた。 レイは、テレビを消した。 もう、何を言われてもいい。 でも、事態は予想外の方向に進んだ。 ある日、マスコミ各社から、記者会見の要請が来た。「あなたの生き方について、きちんと説明する場を設けたい」 レイは、悩んだ。 記者会見をすれば、さらに注目を浴びる。 でも、自分の言葉で、きちんと説明する機会でもある。 隼人と悠馬に相談した。「どう思う?」「俺は、レイがやりたいようにすればいいと思う」「俺もです」「でも、あなたたちにも影響が」「もう、覚悟はできてる」 レイは、記者会見を受けることにした。 一週間後、都内のホテルで記者会見が開かれた。 会場には、数十人の記者が集まっていた。 カメラのフラッシュが、レイを照らす。 レイは、マイクの前に立った。 深呼吸をする。 そして、話し始めた。「本日は、お集まりいただきありがとうございます。亜蘭レイです」 会場が静まり返る。「私は、二十八歳です。フリーランスのグラフィックデザイナーとして働いています。そして、二人の男性と、同時に恋愛関係にあります」 記者たちが、ペンを走らせる。「なぜ、このような生き方を選んだのか。それは、私にとって、これが自然だからです」 レイは、原稿を見ずに話した。「世間では、恋愛は一対一であるべきだとされています
レイと五人の恋人たちが出会ったのは、それぞれ異なる場所で、異なる状況だった。 最初に出会ったのは、隼人だった。 一年前、レイがまだ前の会社でデザイナーとして働いていた頃のことだ。取引先の広告代理店から派遣されてきた営業マンが、隼人だった。 彼は背が高く、スーツを着こなしている典型的なビジネスマンだった。しかし、その目には、深い疲労が宿っていた。 プロジェクトの打ち合わせの後、レイは偶然、廊下で隼人を見かけた。彼は壁に寄りかかり、目を閉じて深呼吸をしていた。「大丈夫ですか?」 レイが声をかけると、隼人は驚いたように目を開けた。「あ、すみません。ちょっと疲れてて」「無理してませ
亜蘭レイが目を覚ましたのは、日曜日の朝十時だった。 東京の夏の陽射しが、薄いカーテン越しに部屋を満たしている。六畳一間のワンルームマンション。家賃は七万円。決して広くはないが、レイにとってこの空間は完璧だった。なぜなら、ここには誰も縛るものがないから。 寝起きのまま、レイはスマートフォンを手に取った。画面には五つの通知。「おはよう。今日は仕事だけど、君の顔を思い出すだけで頑張れる」 最初のメッセージは、隼人からだった。三十二歳の会社員。広告代理店で働く彼は、いつも朝早くから夜遅くまで仕事に追われている。「昨日のパスタ、本当に美味しかった。また作ってね」 二つ目は、蒼太から。二十
レイは、週ごとにスケジュールを組んでいた。 月曜日は隼人。火曜日は蒼太。水曜日は理央。木曜日は奏多。金曜日は悠馬。週末は自分の時間と仕事の時間。 もちろん、完璧にこのスケジュール通りに行くわけではない。仕事の都合や急な用事で変更することもある。でも、基本的にこのリズムを保つことで、レイは五人全員と平等に時間を過ごすことができた。 月曜日の夜、隼人とレイは居酒屋にいた。 仕事帰りの隼人は、いつものようにスーツを着ていた。ネクタイを少し緩め、疲れた表情で生ビールを飲んでいる。「今日もきつかったか?」 レイが尋ねる。「まあね。でも、こうして君と会えると思うと、頑張れる」「そう言っ
平穏な日々が戻ってきたかに見えた。 レイは、隼人と悠馬との時間を大切に過ごしていた。 週に二回、それぞれと会う。 以前のように、五人との時間はなくなったが、それでもレイは幸せだった。 そして、仕事も順調に進んでいた。 新しいクライアントから、大きなプロジェクトの依頼が来た。 レイは、久しぶりに情熱を持って仕事に取り組んだ。 しかし、その平穏は長くは続かなかった。 ある日、レイのスマートフォンに、見知らぬ番号から電話がかかってきた。「もしもし」